北面設置の是非について

COLUMN


太陽光発電を設置するには南向きの屋根の上が望ましいです。最初から太陽光発電を設置することを想定して家を新築するのであれば、真南に近い向きに設置できるように考慮して設計するべきでしょう。しかし既築の家の場合は様々な制約条件から必ずしも南面に設置できるとは限りません。また南面に設置できたとしても、せっかくだから北面のスペースも有効活用して、できるだけパネルの設置枚数を増やしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。実際、北面設置の要望は多くなってきているそうです。

ところが、ユーザが北面設置を要望しながらも、なかなか前向きに対応しにくいという実状もあるでしょう。一般的に太陽光発電設置において、北面設置はお勧めしませんと断るようにしている販売会社様も多いようです。

南面を100%としたときに、北面の発電量は66%となるとよく言われています。南面と同じ枚数の太陽電池を北面にも設置すると、費用は倍になりますが、発電量は1.66倍にしかならず、費用対効果は落ちてしまいます。この「66%」という数字の根拠がどこから来ているのか、出典を調べてみました。

表: 傾斜角30度での北面/南面の日射量比 (NEDO全国日射量平年値データマップから算出)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年間
大阪 29 43 59 77 91 98 96 83 69 48 32 25 66
東京 22 39 57 77 91 97 95 83 72 52 33 21 63
小国 71 71 70 77 89 95 93 82 72 59 58 68 79
釧路 19 25 45 68 84 91 90 79 60 33 19 17 55


NEDO全国日射量平年値データマップと呼ばれるものがあります。多くの販売会社や施工業者が使っているシミュレーションで基になっている日射量データです。このデータから一部の地域の日射量を抜粋し、傾斜30度 真南の日射量と、同じく傾斜30度 真北の日射量の比を求めたものを上表に記載してみました。この表で、大阪の年間での真南と真北の日射量の比が66%となっています。この数字が根拠として一般的に使われることが多いようです。なぜ大阪のものが使われることが多いかというと、シャープや三洋など主な太陽光発電モジュールメーカーが大阪の会社であるためだと思われます。

表の地域毎の違いを見ればわかるように、地域によって北面と南面の比は変わり、東京では63%、大きいところだと小国(山形県)の79%、小さいところでは釧路(北海道)の55%となっています。79%だとかなり許容範囲に入ってきているという見方もできそうです。

また同じ地域でも、季節によって比は変わり、夏は90%以上で北面であってもかなり日射量が大きく、発電量ロスも少ないのですが、冬では30 %以下になるところも多くあり、北面での発電量がかなり小さくなってしまいます。
さらに、この表の数字は屋根の勾配が30度のときのものになっていますが、勾配が低く、水平面に近くなればこの比率はもっと大きくなり、80%を超えるところもあります。

確かに北面に太陽光発電を設置すると、全体の発電効率が落ち、コストパフォーマンスは下がりますが、それが許容できる範囲内なのかどうかは、地域や屋根の状況、ユーザの考え方次第です。一概に北面設置を否定するのではなく、まずはちゃんとシミュレーションをしてみることです。計算に必要なデータは公開されていますので。
(もちろんSolar-Meshでも北面のシミュレーションは可能です。)

さらにいえば、北面設置をすることにより総発電量は増えますので、温暖化ガス削減など環境効果は高まりますし、夏場はほぼ南面と同等に発電するため、ピークカットなどのメリットもあります。ユーザに対してきちんと情報が開示され、メリットもデメリットも合わせて理解した上で、最終的にユーザが良しとするのであれば、北面設置もアリでしょう。

ただし、売りたいがために強硬に北面設置を勧めるのは、それはそれで問題ですので注意が必要です。