国際太陽電池展PV EXPO 2010を見て

COLUMN


■太陽光発電の国際展示会
先日、東京ビックサイトで開催された国際太陽電池展PV EXPO 2010 に行ってきました。今年で第3回。1回目から毎年行っていますが、年々出展社数、来場者数ともに増加しています。広い会場に埋め尽くされている人の数を目の当たりにすると、日本の太陽光発電市場が急成長しているのを実感します。

出展社は太陽電池メーカーだけではなく、パネルの材料や部品、製造装置、検査装置などのメーカー、屋根に設置するときの工具や資材などを扱っている企業、雷や静電気対策を行っている企業、商社など多岐にわたります。太陽光発電というものが、電気や建築、材料など様々な技術を組み合わせた総合力で成り立っている産業だということがよくわかります。

■海外モジュールメーカーの日本進出
今回のPV EXPOを見て特に印象深かったのが、中国や韓国、インド、スイス、カナダなどの海外メーカーの出展が増えてきていることです。ほんの数年前までは国内メーカーが世界の太陽光発電市場を牽引してきましたが、今やドイツのQセルズ、米国のファーストソーラー、中国のサンテックパワーが世界のトップ3で、国内メーカーはその下に甘んじています。

国内の販売代理店でも海外メーカー製のパネルを取り扱うところがどんどん増えていると聞きます。実際に今年あたりから海外メーカー製品が日本の屋根に設置されているのを目にする機会も多くなりそうです。品質や、メーカーによるアフターサポートがどうなるのか未知数のところはありますが、ユーザ側にとっては選択肢が増えることは好ましいことかもしれません。

もちろん国内メーカーもこのまま引き下がっているわけではありません。PV EXPOでも日本企業の技術の高さ、層の厚さがアピールされていたと感じましたし、シャープの堺工場、京セラの滋賀県野洲工場など新しい生産拠点が拡充され、日本の巻き返しもまだまだ期待できそうです。

■霧を使って太陽電池の発電効率をアップ
PV EXPOでは、直接太陽光発電に関わらないけれども、その周辺のビジネスを狙った技術や商品も展示されていました。その中で興味深かったものをご紹介します。

意外と知られていないことかもしれませんが、太陽光発電は、温度が高いときには発電効率が下がります。光が強い夏によく発電するのは確かなのですが、あくまで光をエネルギーに変えているのであり、温度はむしろ低い方が太陽光発電には好ましいのです。太陽電池のカタログに記載されている出力値は、電池の表面温度が25度のときを前提にしたものですが、実際に屋根に設置して、直射日光を浴びている太陽電池の表面温度はかなり高くなりますので、その分発電量が減ることになります。電池の仕様によっても違いますが、夏では20%ほど下がるというデータもあります。

今回展示会で見たものは、霧の力で太陽電池を冷却し、発電効率を上げようというもの。霧は蒸発するときに気化熱を周囲の空気から奪うので、それによって冷却効果が生じます。冷房とは違って省エネルギーです。この原理を使った冷却システムは愛知万博で認知度が上がり、既に都心部のヒートアイランド対策や工場など多くの場面での活用が広がりつつあります。それを太陽光発電にも応用し、発電の効率化を図ろうというわけです。

ただ、この冷却システムのコストと、発電効率アップによるメリットを天秤にかけたとき、メリットがコストを上回るのか気になりました。出展企業の方に質問を投げかけてみたところ、費用対効果はケースバイケースで、場所によってはメリットが少ないことも確かにあるとのこと。やはり現実的には難しいところもあるようです。それでも様々な分野で活躍している企業がその強みを活かし、太陽光発電の性能向上にチャレンジしていることは、そのこと自体がとても素晴らしいことだと感じました。