東向き屋根と西向き屋根の発電量シミュレーションの非対称性について

COLUMN


部屋の間取りは南向きが明るくて好ましいのと同様、太陽光発電を設置する場合でも南向きの屋根に設置するのが一番望ましいのはわかりやすいかと思います。しかしそれぞれの住宅の都合で、南面に設置することが難しいというケースも多く見られます。設置する屋根の向きが南からズレるに従ってどれくらい発電量が下がってしまうのでしょう?

■設置する屋根の向きと発電量の関係は?
一般的には東面、西面に設置すると、南面に対して85%くらいになるといわれています。 まぁ許せる範囲内というところでしょうか。この割合は屋根の傾斜角によっても変わり、傾斜が緩い、つまり水平に近いほど南面設置の場合と変わらなくなってきます。逆に大きく傾いている、尖がったような形状の屋根だと、東面や西面に設置した場合には、太陽が逆の方向にある場合にほとんど発電しなくなり、損失が大きくなってしまいます(日本にはこのような形状の住宅はあまりありませんが)。Solar-Meshの発電シミュレーションでも、屋根の設置角度や向きを変えた場合の発電量を計算することができるのでお試しください。

■東面と西面での違いは?
それでは、東面と西面とでは違いがあるでしょうか? 午前も午後も太陽が出ている時間は同じなので、東面でも西面でも発電量は変わらないはずです。ところが、Solar-Meshの発電シミュレーションでは、西面の方が東面より発電量が多くなるという結果が出ます。これはどうしてでしょうか?

■1日の日射量分布
下図は、東京都のある地点における、2008年3月22日の1日の日射量の変化を示しています。この日射量は、気象衛星ひまわりの可視光センサーによって毎日6時~18時に1時間おきに観測された画像を解析して得られたものです。

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グラフを見ると、一見、12時を中心に左右対称の分布を描いているようですが、よく見ると、中心軸がズレていることがわかります。このため、11時と13時の日射量、10時と14時の日射量は本来同じくらいであるべきなのに、午後の方が日射量は大きくなっています。中心軸を少し右にずらして、12時と13時の間くらいを中心とみなすと、きれいな左右対称になりそうです。

■気象衛星ひまわりの観測時刻のズレ
実は、気象衛星ひまわりが日本上空を観測するのは、毎時およそ35分前後であり、このときに観測したデータを、その次の正時のデータとして発表されています。たとえば12時のデータとして発表された画像は、実際には11時35分頃に観測されたものなのです。6~18時のデータといっているものは、本当は5時35分~17時35分の観測データになっているのです。すべての観測時刻で25分ほど前にズレてるために、午前と午後の非対称が生じてしまいます。

せっかくなので、ひまわりの画像も見てみましょう。上記のグラフで使われているデータのうち、7, 8, 12, 16, 17時の画像データを下表に示します。
12時を中心として、7時と17時、8時と16時が対称的になるはずですが、実際の画像を比べてみると、7時と8時の画像が対応する午後の時刻よりも暗くなっています。

年間を通じて、このように午前より午後の方が日射量は大きくなる傾向があるため、このデータを用いたシミュレーション上では西面設置の方が発電量は大きくなってしまいます。
これはあくまでシミュレーションだけでの話ですので、現実世界においては東面でも西面でも大きな違いはありません。
07a 7時の気象衛星ひまわり。
実際の観測時刻は6時35分頃。
暗くて見えないが真中に日本列島がある。
東の方が明るくなり始め、雲がかかっているのが見える。
08a 8時の気象衛星ひまわり。
実際の観測時刻は7時35分頃。
全体的に明るくなり、日本列島が見えてきた。
太陽が東側にあるため、東側の雲の方が西側に比べて明るい。
東面の屋根に設置している太陽光発電は稼働が活発になってきた頃。
12a 12時の気象衛星ひまわり。
実際の観測時刻は11時35分頃。
南中間近で、東、西が同じくらい明るくなってきた。
南面の屋根に設置している太陽光発電はフル稼働状態。
16a 16時の気象衛星ひまわり。
実際の観測時刻は15時35分頃。
太陽が次第に西側に傾き始め、東側の雲が暗くなり、逆に西側の雲の明るさが増してきた。
西面の屋根に設置している太陽光発電はフル稼働状態。
17a 17時の気象衛星ひまわり。
実際の観測時刻は16時35分頃。
東側はだいぶ暗くなったが、西日が差しこみ、西面の屋根に設置している太陽光発電はまだ稼働中。
※上記衛星画像は気象衛星センター提供による