太陽光発電の稼働率はどれくらい?

COLUMN

~ 日射量の季節変化、経年変化について ~


通常の商品と違い、太陽光発電は消費財ではなく、生産財です。購入した後、10 年、20年にわたって電気を作り続けてくれる設備です。自宅に太陽光発電を取り付けることによって、いったいどれくらいの価値を生み出してくれるのか、購入した太陽光発電がどれくらい働いてくれるのかは、多くのユーザが知りたいところだと思います。太陽光発電の稼働率はどれくらいなのでしょうか?

機械とはいえ、1年365日24時間、ずっと動き続けてくれるわけでは当然ありません。まず夜間はまったく役立たずのため、この時点で稼働率は50%を下回ることになります。さらに昼間、太陽が出ている間でも、太陽高度が高く、ソーラーパネルに正面近くから日射が降り注ぐときには稼働が高くなりますが、朝夕には稼働が落ちます。たとえ日照時間が同じでも、正午前後で太陽が高い位置にあるときの方が日射量が多いためです。以下、本稿では日射量を指標として太陽光発電の稼働を見ていきましょう。

仮に365日、ずっと快晴が続いたとすると、太陽光発電が稼働状況は図1の「晴天の場合」という折れ線グラフのようになります。6、7月で日射量が大きく、太陽光発電の稼働がピークを迎えます。
しかし、現実には6月、7月は梅雨の時期。空には雲がかかっていて、日射量は下がります。図1のグラフに2003年~2008年の東京都での日射量を示しています。「晴天の場合」と比較すると、稼働(日射量)が落ちており、特に夏はその落差が大きいことがわかります。落差をわかりやすく見るため、図2にどれくらい稼働が落ち込んでいるかを割合で示しました。7月は10%近くまで落ち込むこともあることがわかります。ただ、その傾向も年によって違っており、2004年などは空梅雨のため、平年に比べると夏の落差が小さく、50%程度に留まっています。
このように夏に稼働率が落ちる原因としては、太平洋側では夏に降水量が多く冬に晴れる日が多いことと、日射量の絶対量が多い夏の方が、雲がかかったときの損失が大きいことが挙げられます。

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図1のグラフの各月の日射量を年間で合計したものを図3に示します。ここでは東京だけではなく、大阪、新潟、長野の4地点で2003年~2008年の6年間の日射量を算出しています。
1kW出力のソーラーパネルの正面で直射日光を受け、フルパワーでの稼働が1時間続いたときに、1kWhのエネルギーになりますが、東京の場合だと1年間ではフルパワー状態で1300~1650時間に相当するだけの稼働量になります。稼働率でいえば15~18%。
全国的にみても晴れの日が多く、日射量が多い長野県上田市では、1970時間近くなる年もあります。19~22%の稼働率です。
ちなみに人間の働いている時間は、1日8時間、週休二日で月160時間として、160×12 = 1920時間です。日射量の多い地域では、太陽光発電は平均的な人間と同じくらいの働き者といえるかもしれません。

場所よっても年によっても太陽光発電の働きぶりは変わってきます。全国平均では稼働率は12%、年間1000時間の稼働と言われています。 ご自分の地域で太陽光発電がどれくらいの稼働率かご興味がある方は、気象庁のホームページから過去の気象データを検索することができます。
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
地点を選択し、全天日射量のデータを検索してみてください。検索された値に365をかけて、3.6で割ると、上記の稼働時間に換算できます。ただし、全天日射量のデータが存在する地点が限られていることにご注意ください(第一回コラム参照)。